…おっかね。
 それから子供らは、プラカートを握り、眼に力いれて地平線を見つめはじめた。白い雲があるだけである。
 朝日は彼らの影をジッと足もとにおとしてる。
 ――来たっ!
 ころがるように道ばたの高みを駈けおりながらペーチャが叫んだ。
 ――来たぞっ!
 ウラー! アアアアア!
 見ろ!
 見ろ※[#感嘆符二つ、1−8−75]
 春の白い軟かいかたまり雲が光ってるところに黒いでかいトラクターが現われた。隣村から送って来た者が多勢まわりにくっついて、トラクターがやって来た!
 一台!
 二台※[#感嘆符二つ、1−8−75]
 ピオニェールはマラソンだ。赤いプラカートはもみにもめる。
 地響を立て、鋼鉄の胴体を震動させつつトラクターは真直ぐピオニェールの方へ、ビリンスキー村の方へやって来る。まわりは、果ない耕地、耕地だ。
 ――村へ入って、村ソヴェトの前まで来たとき、二台のトラクターの周囲は隣村のもの、うちの村のもの、人だらけで、高いところに一人技師がハンドル握っているのだけが見えた。
 集団農場については積極的によろこんでいない者でも、家に坐っている我慢は出来なかった。技師が真面目な
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