かるか? 記者だ。
 ピムキンは、じろじろ正面から若い者の帽子や眼鏡を見なおして、
 ――それがどうだってえのかね。
といった。
 ――若えもんが、俺らんところで、ちっとでも悧巧んなってかえろうてのは、わるい心掛じゃあねえ。
 ピムキンは、意地わるくそのまま書付をゆっくりまたルバーシカの裏ポケットへしまい、イグナート・イグナートウィッチにだけ挨拶して出てってしまった。

        三

  ┌────────────┐
  │集団農場・万歳※[#感嘆符二つ、1−8−75]    │
  │新しい農村生活・万歳※[#感嘆符二つ、1−8−75] │
  └────────────┘
 プラカートは赤く、朝日に向って、すきとおるように揺れうごく。まだ耕されてない耕地の間の村道だ。
 プラカートとともに行進していたビリンスキー村ピオニェールは、村境のところで立ち止った。十五人の子供が、かたまって熱心に地平線を眺めた。
 ――……見ねえ。
 ――……来ねえな。
 お下げ髪をたらして、しっぽを赤い布で結わえたナターシャがまるで心配そうな細い声でいった。
 ――こわれたんでねえだろか……おら…
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