パァル・バックの作風その他
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)所謂《いわゆる》人
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)とことん[#「とことん」に傍点]の現実にまで触れて
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中国という国へ、イギリスやアメリカの婦人宣教師が行って、そこで生活するようになってから、何十年の年月が経ったであろう。それらの婦人たちは、それぞれの歴史的な時期で中国の男女の生活を見聞きして、生活の交渉をもって来たわけであるが、パァル・バックの作品を知るまで私は、そういう条件で中国にいて、中国を小説に描いたヨーロッパの婦人作家を知らなかった。
「大地」「母」などを、私は深い興味をもって示唆されるところ多く読んだ。正宗白鳥氏が嘗て「大地」の評を書いておられたが、その文章ではバックの淡々たる筆致が中国の庶民の生活をよく描き出しており、それは、バックがヨーロッパ人の優越感によって、中国の民衆の現実を客観しているところから生じる芸術的効果である。よい作品を書くに当って、この客観的な態度というものもまた価値がある云々という意味のことが書かれていたと覚え
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