滅」「あら皮」ノート及び連想(小説のために。)

 あらゆる情熱の動機を、形而上的なものにおいて しかも情熱の表現は愛というものを知らぬ利己と狡猾のフェドラの冷たさの凝固や 売笑婦ユーフラジーの「精神なき悪徳」からラファエリの「意思の力を集中させ、その総量を自由に動かし、そうした流動体の放射を間断なしに人々の心に向ける訓練が出来て来ると、最早こうした力に抵抗し得るものはない」[#「」」に「ママ」の注記]それが美徳であれ悪徳であれ」と考える、あらゆる層をモーラして その個別の中にタイプを見ようとしている。これはバルザックの作品の或る要石を**しよう。が、作品としてはつまらない。バルザックの、情熱のための[#「の」に「の哲学的」の注記]情熱は動物的でありすぎ知的でないから、饒舌な混迷に陥っている。全く心理的な動機を哲学的[#「哲学的」に傍点]と名づけているところに十九世紀心理学の若さがうかがわれる。

p.419 フランスには――一貫した論理というものが、政府にもなけりゃ 個々の人間にもなかった、其故道徳というものがなくなっている、今日、成功ということが、何にもあれ、すべての行為の最高の理
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