バルザック
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)若武士《カデ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)情熱のため|の情熱《の哲学的》は

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#丸A大文字、613−18]

*:不明字 底本で「不明」としている文字
(例)或る要石を**しよう。
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     「幻滅」より。又それからの連想

○二人の友は 未来に輝く二人の運命を全くごっちゃにして考えていた。
[#ここから2字下げ]
 よしや輝やかないにしろ、そういうことはある。
 十三年 執筆の出来なかったとき 自分ものを売った。そしてIに五百円もって行った。コーヒーやをやると云って研究したり金の苦面したりしていたから。いろんな話していたときK、
「あなたがやるんじゃない、僕らがやるんだよ」
 自分がやる と、思っていたわけではないが、自分は何となしそうけじめのつけられたことをおどろいた そんな感情
[#ここで字下げ終わり]
○二人の青年はいずれも社会の下積になっていればいるほど、ますます高い目で社会を判断するのであった。世に認められぬ人間は、自分の地位の卑しいことの憂さはらしに自分の見解の高さをほこるものである。
[#ここから2字下げ]
×しかし自分が、高さによじのぼる機会に手をかけるや、この高き見解はぐらつきはじめる。成功の誘惑はよりつよい。そして、方法をえらばず、才のかぎりをつくして、手にさわったよじのぼりを完成しようとする。そして方法について完成された成功そのものについて、「高き目」の判断を閉じてしまう。
[#地から5字上げ]がの公の場合
[#ここで字下げ終わり]

「妻死なず」へのプロテスト――農村と都会の分裂の悲劇[#この行はゴシック体]
 田舎の生活でまだその翼を切られていなかった若い白鳥たち
[#ここから2字下げ]
×田舎の生活の中における極少数の知識ある女性の苦痛
×半知識女性の悲しい滑稽
×抵抗と適当な試煉のないために病的に羽ばたき――決して体をもち上げることのない――ばかりひどくなって 空想は空想をうみ 細君は乱行をするにいたる過程
 ○汽車の中でのり合わせた軍人――音楽をやる
 ○小学校教員
 ○アブノーマルな崇拝
[#ここで字下げ終わり]
○相手がない ということは田舎での最も不都合な点である。
◎マダム・ボバリーのテーマは本質的にどこにあるか?
○作家がその作品の中に自分自身を讚歎するように
[#ここから2字下げ]
×女性的なずるい依存的亭主は女房を讚歎する
×或は田舎にいて 自分を表現し得ない女が、一人の他人を賛美することで 自分の夢をはぐくむ。
[#ここで字下げ終わり]
○その女が麦死なずをよむ そして悲しみいきどおりを感じる。
○家のあととりのために、早く十六七で結婚させられた女の二つのタイプ
[#ここから2字下げ]
※[#丸A大文字、613−18]いつも自分の生活は 自分のものでないという反抗心をもっている
[#ここから3字下げ]
○自分のあるかないか分らない才能の萎靡を誇張して考えている
○良人の現実的な関心に対して精神を主張する
[#ここで字下げ終わり]
[#ここから2字下げ]
※[#丸B大文字、614−2]梅子の場合、変に甘え 自分をすて エロティックで 子供がうめない。そんなことも早い結婚に結びつけ、エロティックな甘えになる。
[#ここから3字下げ]
○そして男同胞の love affair などに加担する、ぜいたくする、ゴタゴタの花をいけたりする、横坐りになって べたっとして横目つかう。
[#ここで字下げ終わり]
○われわれ人間の滑稽さというものは、その大部分は美わしい感情や善徳や長所が極端におしすすめられたものである。p.53
 自尊心が――小事にこだわる 片意地となり 熱心が――滑稽な誇張となる
◎情熱もまたこれを適当に動かす余地がないので段々規模が小さくなり、微細なものを拡大視するにすぎなくなる。
○何事にでも夫人は ときめき立ち 気を失い 感動した
○女というものは出口のない単調で面白くもない生活には絶望を感じて衝動にかり立てられ、狂乱に身をゆだねるのである。

p.308「君の行為に美徳を入れ きみの思想に悪を入れたまえ。いい事を考えて、悪い振舞いをしないで」
   これは何とすべての弱い人間への金言だろう。

  第二巻
p.273 或る場合においては費用において訴訟の目的を超過する事を、代訟人に対して禁止する如き一寸した法律を急いで拵えるべきではなかろうか
  裁判所の隠語
  「或る人の商売に火をつける」

     「幻
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