ひっぱり出して、おまけに日本刀をこねまわしたなんてことは、幹部派がどんな非マルクシズム的イディオロギーをもってるか、雄弁に語ってる。例え百人の黒島をひっぱって来て百枚脱退声明取消文を書かしたところで、それが彼等の反動的イディオロギーを、自覚あるプロレタリアート農民の前にどう糊塗出来る?
――ふうむ。そんなわけか。じゃあつまり理窟は五分五分で喧嘩両成敗とは行かないんだな、幹部派なるものの正体がそういうんじゃ。
――実際階級闘争に従っているプロレタリアートは、はっきりここでは云いかねるほかの事実もあって、夙に文芸戦線が自分達の味方でないことは知ってるんです。ただ、残念なことは活字ってやつは、社会民主主義者の書く「民衆の為に」っていう文字も、本ものの民衆の為の闘争組織が書く「民衆の為に」っていう字もみんな同じ型にうち出すもんだからね。
[#ここで字下げ終わり]
三週間めの日本の空は水色で、銀杏の葉は金色だ。失業救済事業公債が二千七百八十万円と内定し、上野ではプロレタリア美術展がひらかれてる。
[#地付き]〔一九三〇年十二月〕
底本:「宮本百合子全集 第十七巻」新日本出版社
19
前へ
次へ
全9ページ中8ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング