の工場とはどういうものか、そこで労働者はどんなに生活しているかということを見た。成程、人間は社会の仕組みによってはこうも暮せるのだということが分った。日本はブルジョア国だから工場もひどいが、炭坑は話のほかです。危険の中で獣のように搾られている。ソヴェト同盟の炭坑の労働者の生活はどんなか、それが見たかったのです」と云った。すると、
 主任は、
「それは結構だ! すっかり見て下さい。ドミトロフ君、君このひとを案内してあげてくれ給え」
 そう云ったが、急に私の方を振りかえり、
「ああ君、坑内へ入りますか?」
と云った。
「よかったら入れて下さい」
 念のために断っておくがソヴェト同盟では、婦人の地下労働は一切禁じている。ドン・バスに何千と婦人労働者がいるがそれは選炭その他みんな地面の上での仕事をやっているのだ。
 私は同志ドミトロフにつれられて、先ず大仕掛の動力室発電所へ入って行った。坑内の換気のため、エレベーターやトロを動すために、動力室では五人の熟練工が絶えず働いているが、感服したのはその安全装置である。唸って震えている、巨大なモーターの周囲は油さしやその他にごく必要な部分だけを露出して
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