ぎて、どっかの畑でキャベジが腐ったというようなもんじゃない。五ヵ年計画によって階級闘争が激化された。その結果だ。問題の本質は、ジャガ薯《いも》には無え。富農とその手先の計画的奸策にあるんだ」
 蹲んで所持品棚の樺の戸へよっかかっているのが、下を向いて煙草を巻きはじめた。
 瞬間、同じようにきき飽きた、熱している喋りてとハグれた気分がスーッとみんなの間に流れるのが、信吉に感じられた。
 ヤーシャは、それに拘泥せず巧に「プラウダ」の文句を引用しながらみんなに、富農が作物を出し渋ってること、運輸状態が円滑に行われていないこと等を説明した。
「タワーリシチ、兄弟! われわれは一九二八年の官僚主義撲滅のとき、どんな光輝ある活動をしたか! 覚えてるか? みんな! チョビ髯の工場委員会書記が、どんなザマしてオッ払われたか、覚えてるか?」
 笑いが、あっちこっちに起った。みんなは、そのときのことを思い出したんだ。
「ソヴェトのプロレタリアートが、階級的自発性で動き出すときが、今またわれわれの前に来ている。空の籠下げて、無気力な婆さんみたいに列に立ってばかりいるときじゃない。闘わなくちゃならねえ! 大衆
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