、「赤いローザ」に消費組合監督の突撃隊が出来たことを話したのは信吉だ。
 それが直接のキッカケで、ヤーシャがアジプロ部へかけ出し、このビラとなった。だからビラはひと[#「ひと」に傍点]が書いたものだという気がしない。
 信吉にとって、第一これは、タッタ一度だって味ったことのない気持だ。ビラから、これから持たれようとする集会から、ひとのものではない気がするんだ。
 職場の連中は、どんな塩梅式にもって行くだろう?
 気が揃ってるとばかりは云えない。例えばグルズスキーみたよに、年じゅうブツクサ愚痴ってる家持ち[#「家持ち」に傍点]もいる。そうかと思えばアクリーナみたいに、色っぽい体ばかりくねらせて、五ヵ年計画なんぞ、ビーイだと云った風の女もいる。――
 ツウィーッ!
 ツウィーッ!
 ひょいと気がついて見ると、足許にもういい加減オーリャへまわす分の締金がたまってる。
 信吉は、モーターを切り、首をねじむけてオーリャを呼ぼうとした。が、オーリャはオーリャで、また頻りに何か考えながら働いてる様子だ。
 オカッパの髪を包んだ赤い布の片方の端を上被りの肩へ垂らし、鑢へ調子つけてかかりながら、心持眉を
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