ソヴェト経済の社会化に結びついたプロレタリアート大衆の問題だ――」
 が、そこまで云うと急にヤーシャはピタリと口を噤《つぐ》み、顔つきをかえた。真面目な声になって相談するように云った。
「だが――何故『鋤』工場でも、食糧配給監督の突撃隊をこしらえちゃいけないんだ?」
「ヤーシャ! いいこと思いついた! ほんとに、何故われわれんとこで、食糧配給監督をやることに思いつかなかったんだろう!」
 キラキラ輝く顔になって、オーリャが手を叩いた。
「ヤーシャ! いいわ。ステキだよ、やろう! え? やろう! どう? みんな?」
「ふむ」
 ノーソフが、ゆっくり頭を掻きながら満足げに呻った。
「こりゃ、プロレタリアートの自発性だ」
「そうだとも! われわれは積極的にやらなくっちゃ。直ぐみんなにこのこと話そう!」
「待ちな」
 ヤーシャが、半袖シャツからつき出ているガン丈な腕を曲げて金網をかぶせた時計を見た。
「これからじゃ間に合わない。帰りにしよう。所持品棚のところへはどうせみんな来るんだ」
「そいでさ、交代の連中だって一緒に聞くもん、なおいいや」
 勢づいたアーニャが信吉の髪の毛をひっぱった。
「こ
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