一杯で、信吉たちが行きついたときは、遠くの芝草へ足をなげ出して、明るい舞台の上で人間の動くのだけを満足そうに見下してる男女も幾組かある。
「これじゃ仕様がないや」
アグーシャは先に立ってブラブラ行ったが、急に勢よく振りかえっておいでおいでした。
「いいもんが始るヨ! はやくウ」
五
数百人の輪だ。
中央に高い台があって、運動シャツ姿の若い女がアーク燈の光を浴びながらその上に立ってる。テントの方から労働者音楽団が活溌な円舞曲を奏し出すといっしょに、
ソラ、右へ、右へ、
一 二 三 四!
一 二 三 四!
かえって。
左へ
一二 三 四!
足踏をして!
一二 三 四!
ウォウ――!
合図につれて数百人の男女が笑いながら声を揃えてウォーオ……!
サア
手を振って
高く! 高く!
一二 三四!
見ず知らずの者だが仲よく手をつなぎ合って、前へ進んだり、ぐるりと廻ったり、調子をそろえ、信吉たちは汗の出るまで二かえしも陽気な大衆遊戯をやった。
やっぱり見ず知らずの若い者多勢と、今度は別な砂っぽい広場で「誰が鬼?」をやった。
一人が目をつぶっ
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