クルッとした眼で信吉を見あげた。
「工場学校の、『五ヵ年計画公債突撃隊』だヨ」
「鋤」附属の工場学校では、四年制の小学を出た男の子や女の子が三十人ばかり技術養成をうけている。
「……お前いくらって書く? 二十ルーブリ?」
「やめとこう」
信吉は紙をピオニェールにかえした。
「なぜだい?」
びっくりした様子で、信吉を見た。
「みんな書いたんだヨ」
「俺あ、ここへ来てまだ二週間ぐれえにしかならね。新米だ。もういろんなのに書いた。だから、いいんだ」
つい三四日前のことだ。職場のコムソモーレツ、ヤーシャがやって来て、オイ、国防飛行化学協会《オソアビアヒム》の会員になりな、と云った。工場の者は大抵会員になってるって云ったから信吉も入ることにした。会費五十カペイキ出した。
きのうは食堂で国際赤色救援会《モプル》の委員だっていう若い女につかまって、そこへも加盟させられた。一月五十カペイキだ。一週間のうちに、こういうのをもって来るからね、と、その女は自分の膨らんだ胸へくっつけてる徽章を見せた。鉄格子から手が出て赤い布を振っているところだ。世界じゅうの〔約五十字伏字〕。
こう続けざまじゃ、やり
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