地主。――ふうむ。奴等のおこぼれで食ってるのは何だ?
「これが宗教家さ、次が淫売婦、ペンがついてるのが御用学者に新聞雑誌記者、政治家、役者だ」
この時計は何だね。労働者が資本家に稼ぎ出してやった十七億八千万ルーブリを、労働時間に換算して見た図だ。
これだけの金は、一人の労働者が一日十一時間ずつ働き通して、年六百六十ルーブリ稼いだことになる。しかし、本当に労働者が貰う賃銀は全体で八億なんぼで、それを一人宛の労働時間に割ると、たった五時間分だ。後の六時間というものを、そっくり資本家の腹をこやすために労働者が搾られているわけなんだ。
「ドウでえ!」
信吉は思わずその図の上を叩いた。
「ドイツの学者は、こういうことまで調べているんだ。現在ドイツにあるだけの機械をちゃんと労働者のために使えば、ドイツじゅうの労働者が一生のうちにたった八年間、それも一年に一月近い休暇をとって、一日八時間ずつ働けば、本当の必要は充分みたせるんだそうだ。――だがドイツの労働者がソヴェトみたいに資本家ボイコくらないうちゃ、夢物語だ……」
李の話がまんざら嘘でないことは信吉にもわかる。
だがその理屈が毎日の暮しの
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