なんねえから、その元手がなんぼいる。その勘定を土台にして全同盟の産業をやって行くんだそうだ。
「そこが、社会主義の世の中の価《ね》うちだ」
李がいつか汽車んなかで、松の実を食いながら信吉に話してきかせた。
「だから、ソヴェトじゃ、だんだん工場がいい機械もっているだけのものを廉く沢山こさえられるようになるにつれて、労働者の働く時間が短くなって来てるんだ。今はざっと八時間だが、二三年するとたった六時間と少し働けばすむようになるんだ」
そして、これを見たことあるか、と李は一つの図をあけた。なんだね、この両手ポケットさつっこんで眼玉ばっか引んむいてるのは。――ははん。資本家だナ。こいつが一九一三年に原料と機械に三十八億四千万ルーブリ出した。
盛に働いてるなあ労働者二百五十万人か。そして三十八億なにがしから、五十六億二千万ルーブリ稼いだ。儲がつまり十七億八千万ルーブリ! でけえもんだなあ。
そこでと、何だって? 労働者の賃銀はそのでけえ儲の中から八億二千万ルーブリ? あと九億六千万ルーブリってものは誰が分けて奪っちまうんだ。筆頭が企業家=資本家だね。なるほど。そいから実業家、政府の役人、
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