の消費組合監督突撃隊が出来たのを話したのは彼です……」
 アーニャは、そこで信吉の方へいかにも晴れ晴れした奇麗な笑顔を振りむけながら、諧謔的に、
「尤もシンキーチ自身、自分の言葉のネウチは知らないかもしれないんです。そうなら、どう? タワーリシチ、それを知らしてやるのはわるくないでしょう?」
 異議なアし!
 ウラアー……
 信吉は、うれしさとバツ悪さで思わず赧くなりながら、頭を掻いた。
 その様子をおかしがって、手を叩く。笑う。信吉は、シャツのボタンをかけずに拡げた若々しい胸板のところまで上気《のぼ》せた。

        六

 モスクワは夏の終りが早く来る。
 その夏は、モスクワばかりでなく、イワノヴォ・ヴォズネセンスクにもロストフの工場にも消費組合監督の突撃隊が出来た。どれも、なかなか活動した。「コムソモーリスカヤ・プラウダ」や「労働者新聞」に、あっちこっちで自発的に組織されるそういう突撃隊員の集団写真がよくのった。
「鋤」の突撃隊がはじめてトラックにのっかって、ヤロスラフスキー停車場の引込線の上で腐りかけてるトマトを一貨車、区の消費組合へ運んで来たときの写真も「鋤」労働通信
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