員の記事といっしょに「労働者新聞」に出た。
 信吉の室の壁に、それが截りぬいてピンでとめてある。勿論、各職場の壁新聞に、それを貼りつけられた。
 そのほか、種々な産業の工場から各地方の集団農場へ、取りいれ手伝いの突撃隊が毎日のように出発する。
 工場見学団の男女が、樺の木胴籠にスポーツシャツといういでたちで汽車につまれて出て行った。ソヴェト同盟の社会主義建設の中、バクーの大油田へ! ウラルの新鉱区へ! スターリングラードのトラクター工場へと。
 地方からモスクワ見物にもウンとやって来た。
 広いアスファルト道路にするんで、西瓜車のガタガタ通るモスクワの古い石敷路は、精力的に横丁までも掘じくりかえされている。
 北緯五十五度の炎天へアスファルトの黒煙がムンムンのぼる。
 普請場の大板囲いに沿って、一段高い板張歩道が出来ている。赤旗は高く家々の燦く屋根の上にある。
 大勢の人間が、有給休暇でモスクワから去っても、あらゆる場所にそれよりもっと大勢の人々が熱心に書き、働き、演説をし、モスクワは一刻もゆるまず前進している。――
 信吉は「鋤」の突撃隊に入ってから、また知らなかったモスクワを発見し
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