さえやっちまえばひとりでに消えるもんだろうぐらいに考えて放っておくのは、まるで非階級的な日和見主義だということが、よく分ったと思うんだ。
 一旦、ソヴェト権力確立のために必要となれば、われわれは悦んで餓えにだって耐えて見せる! 国内戦の時代、それをやって来たんだ。
 だが、われわれ、〔三字伏字〕プロレタリアートから一片のパンだって、階級の敵[#「敵」に「×」の傍記]が奪おうとして見ろ。許さねえ! 闘わなくちゃならん! ただパンのためじゃねえ。――階級のために、ボリシェビキは闘おうと云うんだ!」
 ウラーアアアア……
 ウラーアアアア
 煙草の煙と西日とに梳かれた暑い空気がみんなの頭の上で一斉に耀《かがや》き、震えた。
「さア、タワーリシチ! ところで誰が突撃隊になるか? 手上げて見てくれ!」
 軈《やが》てみんな一緒に笑い出しながら、信吉も自分の手を下した。
 そのときまで、手なんぞ上げそうにもなかったアクリーナまで、力んだ顔して窓枠の上から右手を突出してやがる! ハッハッハ!
「そうみんないっときんなっちゃ、職場が困らァ」
 みんなは、夙《とう》から考えてた計画が計らず実現したという
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