はとっくに経ってる。
 が、第三交代の連中がユサリともしないばかりか、今は第二交代のものたちも所持品置場の窓の外にまでたかって聞いている。
 分ったり、分らないだりするいろんな言葉。拍手。鋭い口笛の混った笑声。あっち、こっちへ揉まれながら、信吉はだんだん隠しきれないおどろきを汗かいた顔に表わした。
 次から次へドシドシ不平は不平としてブチまけさせながら、而も気がついて見るといつの間にやらその不平さえそっくりそのまま、大衆がよろこんで消費組合監督突撃隊を支持するような方向に、向けられて行ってるんだ。
 特別ヤーシャ一人が凄腕なわけでもない。オーリャだけがうけたからというわけでもないらしい。赧っ毛のボリスが一こと云う。次の機会に眇目《すがめ》になりかけのノーソフが少し喋る。ポツリ、ポツリ、職長、党員のペトロフが目立たない言葉を挾んだ。――みんなが上手く喋るどころか! ノーソフの奴、勢こんで、
「タワーリシチ!」
と、とび出したはいいが、いきなり次の言葉につっかえて、
「どうした蓄音器! こわれたか!」
 彌次られて真赤になったぐらいのもんだ。
 それでも、みんなの切れ切れな言葉には、底に決
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