われわれは『十月』をひと[#「ひと」に傍点]のためにしたんじゃない! ソヴェト権力は[#「ソヴェト権力は」に傍点]、われわれのもの[#「われわれのもの」に傍点]なんです!」
 轟く拍手が湧き起った。
 熱誠をこめたオーリャの言葉は、時間を忘れさせた。
「タワーリシチ! どうしてわれわれが自身の政府を助けるのをイヤがるようなことがあるでしょう※[#疑問符感嘆符、1−8−77] 政府がわれわれを助けるんじゃない。われわれがソヴェト政府を助けるんです。プロレタリアートのあらゆる智慧と忍耐と、何より大切な階級的自発性で、レーニンの党、われわれの〔四字伏字〕共産党を助け社会主義を達成させなけりゃならないんです! ソヴェト同盟の成功を待ち望んでいる〔十一字伏字〕のためにそうしなければならないんです!」
 まじり気ない、灼きつく歓喜の拍手に送られて、オーリャは信吉が突立っている隅へ引こんで来た。
 オーリャは信吉がそこにいることに気づかない。然し、信吉は見た。オーリャの細そりした、力のある指がハンケチをからめて顔の汗を拭きながら亢奮のために微に震えているのを。

        五

 三十分
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