きはオペラ劇場の天国でやっと音楽をきいたと思い出の中に書いている。)
十月の革命は、ロシアの支配者をブルジョアからプロレタリアートに代えたと同時に、こういう状態を根本からかえた。オペラ劇場で、今日「ボリス・ゴドノフ」を聴いている聴衆は、昼間工場や役所やで、木綿服で働いている男女の勤労者である。金ピカの棧敷や、赤ビロードで張った座席には、冷たい水で顔を洗い、さっぱり洗濯した白木綿のブラウズをきた女が、音楽をききながら、いい香のロシア・リンゴを前歯でかいては、たべている。
昔からのブルジョア文化を、プロレタリアートの利用のために獲得したばかりではない。ソヴェト同盟は、世界のプロレタリアート文化の第一線に立って、さらに新しい自分ら独特の劇を、音楽を、キノを製作し、各劇場は、常に座席の一定数だけ、職業組合を通じて、半額以下で一般勤労者に分けている。
芸術は、階級の武器の一つである。プロレタリアート独裁のソヴェトは、独特なプロレタリアート芸術とその利用法によって、社会主義社会の実生活を表現するとともに、新しい時代に生きるソヴェトの大人と、未来のスメーナである子供とに、いきいきした階級的教育
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