らべて自分の壁にかけている。
『プラウダ』が刻々にうつりかわるСССР全土の、世界プロレタリアート全体の問題について書いている。工場新聞は、その問題に当面して一工場としての立場から同じ題目をとりあげる。壁新聞は、もう一段こまかくわかれた職場学級内の遠慮ない発言、要求、自己批判の手段として利用されている。だから人は見るだろう、一日の発行部数十数万の『イズヴェスチア』新聞社の正面昇降機の横にまでも、絵入り手書きの『イズヴェスチア』勤労者壁新聞は、いつもぶら下っているのを。
(うち[#「うち」に傍点]のこういう壁新聞や工場新聞および外のいろんな新聞と連絡を保って、社会主義社会の建設に貢献している労働通信員、農村通信員は、ソヴェトに三十万人以上ある。)
 ――こんちは。
 振かえりつつ見るとムイロフだ。白いゆるやかなルバーシカをきて蓋をあけっぱなした書類入鞄をかかえている。
 ――この間は日本の金ありがとう、今日は何です?
 ――レーニングラード市ソヴェト委員会があるんだそうです。
 金網をかぶせた頑丈な自分の腕時計を彼は見た。
 ――まだ二時間近く暇がある、室へ来ませんかね。
 親切な眼をも
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