かけて坐っていた若い女が、
――御覧!
よこに並んでいる年上の仲間に、怒ったように低い声でいった。
――そいで、あすこは、どんな村でも電燈をつけて、文明国だって!
それから日本女に向って、高い声で訊いた。
――女は結婚や離婚の自由をもってるんでしょうか?
誰かが小さい声で、
――あすこじゃ、籠に入れて女の子を売るんだって……
といった。
――八つで結婚させるって。
クズニェツォー※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]が声のした方を見た。そして訂正した。
――それは支那やインドのことで、今の日本のことではありません。
質問はつづいた。
小学校は共学か?
女は男の大学や専門学校へ入れるか?
農村の女の生活状態――労働はどんなか?
日本の農村の主な生産はなにか?
日本に組合があるか?
共産党はあるか?
都会の工場のストライキのとき農村は実際的の助けをすることを許されるか?
託児所、健康相談所はどのくらい発達しているか?
日本女は、婦人講習会員たちの質問に深い興味を感じた。熱心に知っているかぎり説明した。箇条を見てわかるように、彼女たちは、農村ソヴェ
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