さんが並べて売っている橋の下を通り、冬宮わきからネ※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]河へ通じた。
スモーリヌイ
ある日、一人の百姓婆さんが電車へのって来た。更紗の布《プラトーク》を三角に頭へかぶり、ひろい裾《ユーブカ》の下から先の四角い編上げ靴を出して、婆さんは、若い女車掌に訊いた。
――サドーワヤへはどう行ったらよかろかね?
――十月二十五日通りをのってって三月十八日で降りなさい。
――へ? 十月二十五日から三月十八日※[#疑問感嘆符、1−8−77] おらおっちぬよ、そんけ乗ったら、この年で……
これは、革命後ロシアではいろんな町名が変えられ、それが大抵世界のプロレタリアート革命運動に関係のある年月日、人名などを揶揄ったレーニングラード人の笑話である。
冬宮は、その旧ニェフスキー・プロスペクト・十月二十五日通りとネ※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]河との間にある。
革命第十一年目、六月の或る朝。朝日がまんべんなく冬宮前の広場にさしている。まだちっとも暑くない。軽い朝日を受けてこっち、ハルトゥリナ通りの方から一人、黒い書類入鞄を下げた女
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