上のことだという説明が加えられているのである。
『中央公論』の新年号に訳載されているのは、紀行の第三節までである。あと、どの位つづいているものであろうか。とにかく、第一節において、ジイドは、心を傾けてソヴェトに開花している日常生活の幸福そうな明るさ、行き届いた文化的施設、どこの国においてよりも深く強くヒューマニティーを感じさせる人間と人間との接触、共感、民衆が享有している非常に長い青年期の高い価値と美とを称讚し、描写している。
ジイドが、長い前置と著しい精神の緊張とをもって輝やかしいソヴェトに見のがすべからざる誤謬と観察したのは、主として、社会生活に現れている「異常な画一」「非個性化」民衆はそこに偽善があろうなどとは夢にも思わない程それに馴らされている「画一主義」「プラウダ紙によって彼等が知り、考え、信じるにふさわしいことを教えられ」たままでいるために生じていると観察された幸福の可能性についてである。ジイドは、ソヴェトの民衆が世界のどこの国の民衆より幸福なのは、比較というものを奪って、幸福だと信じこませられているからである、と観た。彼等の幸福は、希望と信頼と無智とによってつくられてい
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