に赤軍が還ってくることを信じて抵抗しつづけた一つの物語である。この長篇小説は、当時ナチスの制圧に抵抗し、奮闘していたソヴェト同盟の人々にいいつくせない同感と、歓喜とをあたえた。そして数ヵ国語に翻訳されたこの小説はナチスの残虐にさらされていたすべての国の人民に、人類の正義、発展、平和のためには、それらを破壊するファシズムを根底的にうちしりぞけ、とりのぞかなければならないことを決意させた。
ワンダ・ワシレーフスカヤが長い間、他国の勢力に支配されて苦しみつづけたポーランドに生れ、その地方がゆたかな穀倉であるために、一九一七年の革命のときの侵入軍にも、ナチスにもねらわれ苦しめられたウクライナの民族詩人を良人にしていることは、彼女の平和と民族自立のための活動に深い必然性をあたえている。ワンダは「虹」のほかに一九三九年の夏、長篇の第一部「湿地の焔」を脱稿したが、ドイツ軍にその印刷所を占領され、やっと原稿が救われた。この作品は一九四〇年ソヴェトで発表された彼女の第一作となった。この小説にはポーランドのファシスト的支配に抗するウクライナ農民の生活が扱われた。一九四一年に第二部「湖水の星」が完成したが
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