、おかっぱを活溌にふりながら、自習時間がやかましいことや、自治に対してみんなが無責任だ。いたずらに外套をかくしたり本をかくしたりする者もある。(大学寄宿舎は男女学生一緒。室だけきっちり分れてる。)我々はそんな子供なのか? というようなことを話したのだ。ターニャも学生委員(衛生部)の一人なんだ。
 ――ワーニカは批判能力がないんだ。
 チリチリこまかにちぢれた髪のイリーナが、賢い皮肉な笑顔で云った。
 ――ターニャの話したことは、もう陳腐な古くさいことよ。誰だって知ってる!
 ――俺はイリーナを支持するよ。
 ――何ガーガー云うのさ。
 のどまで、灰色のスウェーターをきっちり着こんだマルーシャが一段高い声で云った。
 ――これは規律の問題より、むしろ空間の問題さ!
 マルーシャは、みんなより年上だ。寄宿舎で、彼女は一室貰い、結婚してガリツェルという、やっぱり経・法の学生と暮してる。
 ――そうだ! 断然空間の問題さ!
 誰か、うしろから大きな声で云った。
 ――我々が一室に二十人いるとき、或るものはたった二人でそこを占領してるという事実は、空間の問題を呈出するよ。
 彼等は笑いながら、ぞ
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