スカテイであります。フラスカテイー!」叫んでいる時にロンドンが夜になった。
遊覧自動車はそれから東へ東へととって肉市場スミス市場のアーク燈に照らされた白い鉄骨アーケードの下を徐行した。古代ロンドンの城門の一つをくぐった。
一本の街路樹もない、暗い狭い街が現れた。ガス燈が陰気にひのけない低い窓々を照し出しているきたない歩道を、そこの壁と同じような色のなりをした人間がぞろぞろ歩いている。闇をつんざいて時々ぱっと明るい通があった。戸のない階段口が煙出し穴みたいに壁へ開いている。
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│寝床。六|片《ペンス》。 │
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木賃宿である。
案内人は立ち上らず坐席から首だけのばして大きくない声で説明した。――ここいらが皆有名な東端《イーストエンド》の一階家《ワンストーリィドゥエリング》です。
再び暗い街。暗い街。暗い建物のさけ目から一層黒い夜が鋭い刃のように見える横丁の前をトーマス・クックの東端《イーストエンド》遊覧自動車は体をほっそり引押すようにしてすべり過ぎた。
市営労働者住宅は七階だ。が空間利用法
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