ロンドン一九二九年
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)乗合自動車《オムニバス》

|:ルビの付いていない漢字とルビの付く漢字の境の記号
(例)「|英国の家庭《イングリッシュ ホーム》」

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号)
(例)※[#感嘆符二つ、1−8−75]
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 手提鞄の右肩に赤白の円い飛行会社のレベルがはられた。「航空ユニオン。27」廻転するプロペラーの速力を視覚に印象させるような配列法でこまかく、赤白、赤白。
[#ここから2段組み、横書き、底本では前後の文とは改行しない]
巴里。    ロンドン。   リオン。    マルセーユ。
9.オーブル通 ヘイマーケット パレス・ホテル 1.パーベル通
[#ここで2段組み終わり]
レベルは射的店の風車に似ている。
 四時間前、鞄は巴里の飛行会社で白エナメルの計重器の上にあった。いまそれはロンドンのただなかにある。ホテルの古風なセセッション式壁紙の根っこに置いてある。
 少しばかりの着物の束を押しつけてオリーブ色の手帳、大
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