で来てこぼれを探し、無いので後から来た別な鳩の背中にのり大きく翼をバカバカやった。
今日は日曜で大石段はすっかりからりとしている。聖《セント》ピータア寺院の内部で説教があった。パイプオルガンが時々鳴った。会衆は樫の腰かけから立ったり坐ったりしてアーメンと云った。子供が自分の退屈をまぎらすため、脱いだ帽子を体の前に行儀よく持って立ちながら下を向いて、できるだけ踵を動かさず靴の爪先をそろそろ重ねる芸当を試みている。眼鏡で鼻柱をつまんだ僧侶が説教壇に登った。
――宗教とはいかなる禁制をも意味しない。ただ諸君とおよび諸君の光栄ある子孫の一生のための秩序、原則としての宗教あるのみである。
少年団《ボーイ・スカウト》大会出席のためロンドンへ出て来た大男の団長《スカウトマスタア》が実用的なことは靴とひとしい説教の間にそろりそろりと裸の膝頭でベンチの間を抜け聖壇正面がすっかり見える大柱の下へ立った。
出口のやっと一人ずつ通れる柵の左右に僧が立って口をあけた喜捨袋を突きつけた。
ハイド・パアクの騎馬道では艷やかな馬と人とがひるまえの樹の下を動いていた。おさげの少女である。山高帽と黒い乗馬服の
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