通にあった。自動車に関係ある人なら誰でも会員になれるのだそうだ。じゃあビーン製作工場の労働者や、オーステン製作場に働いてるものはてのひらの皮まで自動車油にしみついてずいぶん直接関係の者なんだが――どうだろう? 一つ会員にしちゃ貰えまいか。夜会服で英国のプディングを食っている王室自動車クラブの連中はびっくりして、その仲間をそっと喫煙室の隅へ引っぱって行き、舌を出させて覗き込むだろう。それから医学的忠告を与えるに違いない。――君、気をしずめ給え。冷えないように今のうち家へ帰ってヒマシ油飲んで床へ入るこったね。……
ロンドンの全人口が毎土曜ゴルフをやりに出かけるのではない。証拠に、こう云う文句がある。「おい、あの紳士は、フランス語、イタリー語にゴルフ語しゃべくるぜ」
ジュネ※[#濁点付き片仮名「ワ」、1−7−82]に於ける国際連盟の都市衛生顧問は、世界に於て最も衛生施設の行届いた都会としてロンドンをあげるだろう。巡回看護の制度はロンドンで最初に制定されたと。ロンドンで病院《ホスピタル》と云えばほとんど無料病院の同義語ではないか、と。たしかにイギリス人は公共慈善事業への応分の寄附は、犬
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