合い塵を捲き上げつつ流れる人渦とを見るだけである。
ヨーロッパの買占人、紐育ウォール・ストリートでは、アスファルトとギャソリンくさい空気の中で著名なる経済学者ベブソン氏を不安ならしめつつ、未曾有の貸出と買占が行われている。
ベルファストでは英国|労働組合《トレード・ユニオン》が大会開催中だ。議長ベン・ティレットがした演説にはこういう一節があった。
「国際経済統制の権衡の大部分はアメリカ合衆国に移動した。戦時中アメリカが集積した債務はこの移動の一原因にすぎぬ。アメリカの莫大なる天然資源、素晴らしい国内消費、不断に展開しつつある繁栄。これらもまた考慮に入れなければならない。西欧の資本家は利潤と返還資金を待望している。英国がこれらを供給しなければならぬ。
それ故労働組合運動は経済単位としての英国国家組織のなされる提案に密接な関係をもって従わなければならぬ。」
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ソラ、巡査が手をあげたぞ!
今のうちだ。つっきれ!
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が、日本の新聞までその写真をのせるパレスタインの「欺きの壁」とは一体何だろう? 何故英国は、大英博物館わきに本部をもつジオ
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