30の比率であることを心がけている。人間のうちにあっては、例えばスノーデンがヘーグでは100パーセントの英国人[#「英国人」に傍点]で英国の利害[#「英国の利害」に傍点]を主張している時、それを支持するロンドン中流男女は、自然的公園の樹蔭をスコッチ・テリアをつれパイプとともに散策しつつ彼らの沈着な商魂《コンマーシャルマインド》を放牧した。スコッチ・テリアの鼻面は四角だ。手をのばした背中に臆病な挨拶《コムプリメント》を与えようとするとスコッチ・テリアの剛毛は自尊心のごとく無用の愛撫に向ってけばだった。
 |山の手《ウエストエンド》のエハガキ店頭の滑稽《ユーモア》は大体犬と猫とが独占している――。

 弾機《ばね》のいい黒塗の乳母車に白衣の保姆《ナアス》をつれた若夫人が草原の上へ小テーブルに向って脚を組んでいる。そこはケンシントン・ガーデンの奥の野天喫茶店だ。黄赤縞、或は藍と黄の縞、大きな日除傘は英国公園の樹々の間にあってややエキゾティックな派手さを部分的に描き出した。片手のキッド手袋はぬがぬままステッキのかしらについて、茶碗をくちもとにはこんでいる老紳士もある。あたりの草原に雀と鳩がいた
前へ 次へ
全67ページ中15ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング