リアルな方法とは
宮本百合子
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)蠢《うごめ》いて
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)本当のように[#「本当のように」に傍点]描く
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ついこの頃、科学の仕事をしている友人から大変興味のある話をきいた。それは植物の分類に関することで、従来の分類は、目で見えるだけの葉っぱの形、花の形、実の工合などが目安でされていた。鋸状の葉っぱは葉っぱの目に見えるその特徴によって、他の鋸状の葉っぱをもつ樹との類似を見られて分類の条件とされていた。ところが最近の植物の分類の方法は進歩して来て、只そうやって肉眼で見える形の上での類似などばかりにたよらず、もっとその植物の生存の本質的な点、例えば或る葉が一定の光の下でその葉緑素にどんな変化をおこすかという点にふれて観察して、その有機作用の共通性で、植物の分類をするようになって来たというのである。だから、昔の、目で見較べたばかりの分類より、もっと各植物の生活の内部に直接ふれて観察が行われてゆくわけである。
この自然科学の一新面の話が、ひどく面白く思われるのは、文学のリ
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