われている新しい方法が、きわめてまざまざとリアリズムの真実なありかたの一面に共通している。
人間性という言葉は文学の上で、とかくあらましな総括でつかわれるならわしだが、その人間性の具体の姿は、それぞれの植物がもっているような特質とその特質における共通性をももっているわけで、人間性もその発露は、自然主義が本能に帰結させたより遙に多角なものとしてうけとられて来ているのだと思う。人間は植物とちがって、自分の意欲で、自分の社会的な分類の埒から跳躍する力をもっている点も、人間の文学のリアリズムの面白さ複雑さである。人間性への具体的な迫真の試みだけが、リアリズムを自然主義の匂いの中から歩み出させ、明日の文学へ新しい展開を与える可能を見出してゆくのだと思われる。[#地付き]〔一九四〇年九月〕
底本:「宮本百合子全集 第十二巻」新日本出版社
1980(昭和55)年4月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
初出:「月刊文章」
1940(昭和15)年9月号
入力:柴田卓治
校正:松永正敏
2003年2月13日作成
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