在までの放送局の研究的な仕事のうちに、聴取者からの反響は、どんな形で調べられ統計づけられて来ているのだろうか、と思った。
投書を分類する。それはずっとやられているだろう。けれど、放送局に来るハガキ投書を整理して数を出すだけでは、今日聴きての心理に印象されている一種の消極な感じの原因を生々しくつかんで、それをとりのぞくことは出来にくそうに思われる。
一晩なら一晩とおしての放送を全く強制のない条件で聴かしてどれを面白がるか、一つの話のどの部分で興味が示されたかという調査は、すでに実行されていることなのだろうか。日本でない或る都市の児童劇場では、児童心理の教授が五、六人の助手を率いて数年に亙ってそういう心理学的方法の調査をしている状態を見たことがあった。そういう科学に立った調査から示される図表は、同じ図表でも形の方からきめてかかっているのでないから、現実的で動的で、その業績が多方面に役立てられている。
ラジオについて宣伝という面が画時代的に重視されているとすれば、聴きての生活から反映する心理的なものの科学的研究などは、第一に真面目にされるべきだろう。聴取料をはらっている家々の数は五百余
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