ゃごちゃした、灯かげのチラチラする蝋くさい洞の中にある。
復活祭《パスハ》の夜、総ての劇場とキネマが閉され、大劇場のオペラ役者は基督救世主寺院《フラム・フリスタ・スパシーチェリヤ》で聖歌を歌う。労働新聞は一週間前にこの事について時評を書いた。――「労働者は何処へ行くんだ? 教会か? 芝居か?」――この問題は我々の興味をもひいた。何故なら、労働者は日頃反宗教教育を受けている。古い民族的祝祭が一九二八年にどのような新形式と内容をもって現れるか、СССР生活に目立つ一つのくさびでなければならない。
アルバアト広場に電車が停る。乞食が車内へ入って来た。彼は腰から下がない。胴の末端は四角い板で、板の下に四つの水車輪がある。両手にローラースケートをはいて、
――|助けてくれ《パマギー》、|不幸な者を《ニェシャーッツヌイ》。|助けてくれ《パマギー》――
彼は若い。永久の憤りが彼の眼の中にある。
雑誌売子が来た
――鰐《クロコジール》! |一等面白い雑誌《サアモイ・ヴェーショールイ・ジュルナール》、クロコジール! 五カペイキ! クロコジール!
СССРの皮肉の諧謔の好標本である『鰐《クロ
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