モラトリアム質疑
宮本百合子
−−
【テキスト中に現れる記号について】
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#ここから2字下げ、横書き]
−−
噂の方が先に来ていたモラトリアムが遂に始った。発表後第一日である昨日の新聞紙にはモラトリアム案内の記事が満載された。月給現金最高五〇〇円、一ヵ月に預金払戻し世帯主三〇〇円と家族一人増す毎に一〇〇円、今までよりずっと暮しは楽になると、次のような式が示された。
[#ここから2字下げ、横書き]
手持現金旧券+(新円100円×家族人数)+500円以内の給料+300円+(100円×X)
[#ここで字下げ、横書き終わり]
ところで、このはっきりとした式をしげしげと眺めているうちに、私たちの心には、いくつかの疑問がわいて来た。
現金で支払われる月給はひとし並最高五百円まで。残額はいくらあろうとも全部封鎖預金にくり込まれる。つい先頃公表された、最低賃銀男子四五〇円という額を思い合わせてみると、この最高五〇〇円は要するに最低であることが明瞭となる。その上、最低四五〇円とされたことは、まだまだ一般俸給生活者がそれだけの給料をと
次へ
全5ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング