正太郎という人が、中央労働委員会の会長に就任した。これは、世界にも類のない民主化の方法である。
同時に主要食糧供出に対する強権発動のことが云われている。申告すべき退蔵物資の十六種目一覧表も載った。ここに又一つ奇妙なことがある。主要食糧は、なるほど直接人命にかかわる性質をもっている。だが、農民は一年の労苦を傾けて、それを生産した者である。供出したがらないのは、したがらない理由がある。それにもかかわらず、農村の生産必需品の原料ともなる物資は、いくらかくしておいても罪にならず、ただ買い上げられる丈で米を自分でこしらえる農民が、出さないからと、三年以下の体刑、一万円以下の罰金を予約されているのは、いかにも人間らしくなくて苦しい。口の中で、米の味さえにがくなる、この口の中のにがにがしさをなくするためにでも、食糧は人民管理にうつされる以外に良い方法はないのです。[#地付き]〔一九四六年二月〕
底本:「宮本百合子全集 第十六巻」新日本出版社
1980(昭和55)年6月20日初版発行
1986(昭和61)年3月20日第4刷発行
底本の親本:「宮本百合子全集 第十二巻」河出書房
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