人の未亡人、働きてを失った老いた夫婦がおられるでしょう。父を失った子供たちの数はいかばかりでしょう。七千万という日本の人口を、男女別にわけると、婦人の人々が三百万人多くなりました。この事実は、どんなに多くの男が戦争で死に、こんにち婦人の涙と汗とがしぼられているかということの証明です。
世界の男女が心から働くものの手をつなぎ平和と生活の安定を求めて、メーデーに行進するのだとすれば、それこそ私たち日本の婦人の最も深刻な希望を表わしたものではないでしょうか。ナチスにあらゆる幸福をうちくだかれたドイツ婦人、ファシズムにしいたげられつくしたイタリーのあらゆる婦人。そして、ナチスとファシストをうちやぶるために、愛する良人や兄弟をぎせいとしたすべての民主国の女性たちは、世界に平和のとりもどされた第二回のメーデーを、新しい平和への決意によって迎えております。
メーデーのスローガンのなかに、生活費を土台とする最低賃金制度を確立してほしい、ということがあります。一軒一軒の家庭の主婦として、これをきき流すことが出来ましょうか。去年から度々危機突破資金をとっても、決してそれは、気ちがいじみた物価に追いつ
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