メーデーぎらい
宮本百合子

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【テキスト中に現れる記号について】

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(例)[#地付き]〔一九四六年十月〕
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 憲法が改正された。すべての日本人は、男女、身分の差別なく法律の前には平等であるという立て前による憲法が出来た。民主憲法といわれる根拠は、その前文に、主権は人民に在る、といわれていることである。すべての人民は働く権利をもっている。そしてまたすべての人民は教育をうける権利をもっているとも明示されている。政府は、この民主憲法を、世界人民の祭日である五月一日のメーデーに実効を持つようになるのはいやだから、十一月に入ってから、五月一日をさける日どりで発布すると、新聞に発表した。そのときは大した金をかけて、憲法祭をやるという計画も発表している。
 日本の人民の九割五分は勤労する人々である。今年のメーデーによろこんで行進した人々の数は、世界第二位であった。民主憲法というならば、戦争の終ったこと、野蛮な軍事権力の崩れたことをよろこんで、雨の日のなかを、ああやって行進した日本人の九割五分の人々の嬉しい日、五月一日こそ、愉快な一致と
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