暗くするのであった。インテリゲンツィアの中にはもっと質のわるい毒気をふきかける人々もいた。彼等は飲んだくれながら、嗄れ声で云った。
「君は何だ? パン焼き――労働者、不思議だ。そうは見えない。俺はパリで、人類の不幸の歴史、進歩の歴史を勉強した。そうだ、書きもした。――おお、こんなことがみんなと何と……」
 彼は、ゴーリキイに、アンデルセンの有名な「見っともない雄鴨」の話を知っているかと訊いた。
「この話は――誘惑する。君ぐらいの年には僕も、自分は白鳥じゃないか? と考えたもんだ。進歩――それは気休めだよ。人間が求めているのは忘却、慰安であって、知識ではない」
 この時分、ゴーリキイは彼を「俺のレクセイ・マクシモヴィッチ、俺の可愛い錐、新しい人間!」と呼んで親密にするモローゾフ紡績工場の老職工ルブツォフを知っていた。クレストッフニコフの労働者で指物師のシャポーシニコフとも知り合っていた。「ドイツ人」という綽名のあるルブツォフは、辱められた晴やかさに満ちて、ゴーリキイに思い深げに叫ぶのであった。
「俺の可愛い錐。お前の考えはよ、正しい考えだ。だが、だあれもお前の云うこたあ、信じやしねえ。損
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