がら、マクシム・ゴーリキイはその退屈をこらえ「絶大な緊張をもって、草鞋虫の這っている窖の壁を見つめ、坐りつづける。」彼の内心に答を求めて疼いている数限りのない「何故?」がそこから彼を去りかねさせるのであった。マクシムは、抑え難い感動をもってゲルツェン、ダーヴィン、ガリバルジなどの肖像を眺めた。そして、息苦しい室内に集って真理を擁護しながら議論をわき立たせるこれら一団の人々が、よりよい人間の生活の招来のために献身していること、彼等の言葉の中には彼の無言の思いも響いていることを感じ「自由を約束された囚人のような狂喜で」これらの人々に対したのであった。
同時に、これまで経験したことのない妙なばつわるさ、居心地のわるい瞬間が、ゴーリキイの生活に混りこんで来た。これらの学生達は目の前へ彼を置いて「まるで指物師が並々ならぬものを作ることの出来る木の一片でも見るよう」な眼付でゴーリキイを眺めた。「子供が道傍でひろった大きい銅貨でも見せ合うように、誇りをもって」彼を皆に紹介し合った。これは、ゴーリキイの淡白な気質にとって工合わるかった。更に彼等は、ゴーリキイを「生えぬきだ!」「まったくの民衆の子だ!
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