云った。
『俺は戦争だろうと思ったのに!』
皆は揃ってお茶を飲んだ。そして安らかに、とは云え、声を潜めて用心深く語り合った。」
「二日の間彼等はひそひそと囁き合っては何処かへ出て行った。またこちらへも客が見えた。そして何か詳細に語りあった。私は何事が起きたのか知りたかった[#「私は何事が起きたのか知りたかった」に傍点]。けれども家の者は私から新聞を隠した[#「けれども家の者は私から新聞を隠した」に傍点]。そこで」知り合いの兵卒に「皇帝の殺されたわけを訊いて見た。彼は声を潜めて答えた。
『そのことは口にしちゃいけないんだ』」
そして、ゴーリキイは、「これらのことは忽ち消えて日常の瑣事に覆われてしまった。」とその含蓄ある条を結んでいるのである。その事件があってから三十四年の後(一九一五年)に至ってゴーリキイは「人々の中」でこの記憶に触れているのであるが、この事件の経験のしかたからはっきり自覚される筈の当時の彼の事情――一箇の小さな人間として彼自身が息苦しく封じ込まれていた環境の小市民性、及びそれが彼の旺盛な内的発展の一面を直接間接に鈍らせていたこと等については、特別何ごとをも云っていな
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