ったら君を呼ぶことにする、いいかね?」
「考えて見ます」
この時ロマーシは、カザンのマリア・デレンコフと結婚しようとしていた。その報告をロマーシからきいた時から、ゴーリキイは既にロマーシと一緒に生活する時の終ったのを感じていた。何故なら、兄のパン店で本をよむ女売子として働いていたマリアを、ゴーリキイは恋していた。しかもマリアという彼女の名を父や兄や夫が呼ぶようにマーシャと呼び得る機会は、自分の一生に決して到達しないことを全身で理解しつつ。そのマリアがロマーシの妻となり、猶ゴーリキイが嘗て彼女を恋していたということを、彼女がロマーシに話した――恐らく現在の幸福を一層甘美にする笑いと共に。それらのことは、ゴーリキイに、彼等とは別に暮した方がいいと思わせるのであった。
ロマーシは遂にクラスノヴィードヴォを去った。ゴーリキイは、この別離から深い哀愁をうけた。
「また会おう、友達!」
そう云って別れたロマーシとゴーリキイが再会したのはそれから十五年後、ロマーシが「民衆の意志」党の事件でヤクーツクで更に十年の流刑を終ってからのことであった。
秋になってから、ゴーリキイは村を去りカスピ海の岸
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