ごとにプロレタリアートの政党ボルシェヴィキの政策を理解し「十年」「私の祝辞」において、ますますそれに接近することを見て失望した。一九二六年から着手された「四十年」でゴーリキイは十月革命までのロシア近代の生活を描こうとした。ゴーリキイの誕生六十年記念祭にあたって、ソヴェト同盟・共産主義アカデミーで行われた討論は、ゴーリキイをもっとも重大な使命を果した文豪であるとした。〔伏字二十八字〕(この一行は復元できない)ロシア民衆の生活がいかなるジグザグの道をとおり、流血と犠牲をもって十月革命の大道へ辿りつき、更にその道を前へ前へと進んでいるかということを、その多様さ、複雑さ、矛盾のままの姿で描いた作家は、ゴーリキイなのである。
一九三二年、ロシア革命第十五周年記念に、世界は一つの壮大な老勇士の前進を目撃した。六十四歳のゴーリキイは、その永い闘いと動揺の後、旧インテリゲンツィアという社会的集団とともに、階級から階級へ移行した。ソヴェトの建設、生活の現実をつらぬいてゴーリキイの個人主義的な理想主義は社会主義的世界観に高められた。ゴーリキイはソヴェト同盟の真の一員、プロレタリアートの政党の一員となった
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