されたが、ゴーリキイは以上の人々の誰ともちがい、勤労者らしい淡泊さと同時に現実を恐れない突き込みをもって大衆の半数を占めるところの女のさまざまの姿を描いている。ゴーリキイは極めて健康な本能によって人間としての女が発展進歩すること、社会的な土台の拡大につれて女の世界観も高まり得ること、そのために援助する義務が先進的な男女にあることをその芸術の中で示した。その一つは「母」である。ゴーリキイの最近の写真に、国内戦時代のパルチザンの活動をした婦人たちと話しているところを撮ったのがある。ゴーリキイは膝の上に片肘を突き、唇の両わきを人さし指と親ゆびとで押えながら熱心に耳を傾けている。ゴーリキイはロシア革命史の編纂委員長であった。また、工場史の編纂責任者であった。人類の希望を集めて新しく建設されつつある社会の中で、ゴーリキイは婦人が新しい発展的タイプとして立ち現れて来ていることを充分理解したのである。ゴーリキイがかつて最も文化のおくれたトルクメンの婦人代表に向って述べたよろこびと歓迎の言葉は、決して遠い沙漠に住んでいるトルクメンの婦人たちだけを鼓舞するものではないのである。
[#地付き]〔一九三六年
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