マクシム・ゴーリキイによって描かれた婦人
宮本百合子

−−
【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)女子《おなご》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)いたずら[#「いたずら」に傍点]とは何のことであるか
−−

 人間と人間との遭遇の中には、それを時間的に考えて見るとごく短い間の出来事であり、その間にとり交された言葉や眼ざしなどが僅かなものであっても、ある人の生涯にとって非常に意味の深い結果や教訓をもたらすことがある。私が、マクシム・ゴーリキイに一度会ったということは、その当時には却って理解していなかった彼の芸術的生涯を理解するための生々とした鍵となっていることが、ゴーリキイの亡くなった今日はっきり感じられる。
 既に知られている通り、ゴーリキイは一九二三年にレーニンにすすめられて、イタリーへ持病の肺療法に行った。その時分ゴーリキイは回想の中にも書いている通り、当時のソヴェト同盟の政策に全部的な同感を持つことが出来ず、急進的なインテリゲンツィアを中心とする『新生活』という雑誌を編輯してレーニンに対するブルジョア世界のデマゴギーに対して闘いつ
次へ
全21ページ中1ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
宮本 百合子 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング