日でか? 人を発達させ、成熟させ、改善させるものは、不幸か、でなければ恋愛である。」猛烈に生きたがって世間へ出たがっているマリア。「本当にそうだ。私は自分でもこれほど熱烈に世の中に出たがる心持は短命の前兆ではあるまいかというような気がする。誰にわかるものか!」
この年の九月にマリアは母や叔母たちおきまりの同勢でミケランジェロの四百年祭を見るためにイタリーのフロレンス市へ旅行した。趣味のある娘ならその前で讚美するのがきまりとなっているラファエルの聖母を、マリアははっきり自分は不自然だからきらいだといっているのは面白い。そんなに理解力のつよいマリアさえも貴族としての境遇は愚にした。「ロシアには下らない人間がたくさんいて共和制を欲しているということである。堪らないことである。」と考えたり、それら急進的な人々は「大学とすべての高等教育を廃止する」ものだという間違った説明をふきこまれたまま怒っている姿は哀れである。
ロシアの一八六〇年代から八〇年代は、単にロシアにとってばかりでなく世界の人類の進歩、解放の歴史に大きい意味を与えた時代であった。ロシアでは一八六一年農奴解放が行われたが、これはド
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