族の娘に生れ、そのほかの社会のすがすがしさや活動性を知る機会をもたないマリアは、退屈で消費的な貴族生活の中でともかく何か変化を求めている。社交界へ出たがって、早く大きくなりたがっている。別荘地のニイスの社交界なんぞではなく、華々しいペテルブルグかロンドンかパリの。
「私が自由に呼吸できるのはそこである。社交界の窮屈は私にはかえって楽だから。」マリアは自分が社交界に出たいのは、「結婚する為ではない。母様と叔母が、そのなまけをふり落すのを見たい為である。」公爵Hが結婚した報知は十三のマリアの手からその新聞を「取り落されず、反対にそれは私にはりついた。」「おお私は何を読んだのでしょう! 私は何を読んだのでしょう。おおこの苦しさ。」「今日から私はあの人に関するお祈を変える。」「書けば書くほど書きたいことが殖えて来る。それでも私の感じていることを皆書くことはできない! 私は力以上の絵を仕上げようと思いついた不幸な画家のようだ。」
マリアは十四歳になった。「どうすればみんな子供からすぐ娘になれるのだろう? 私にはわからない。私は自分にきいた。どうしてあんなのだろう? いつとなしにか、それとも一
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