第十六回党大会は終った。五ヵ年計画第三年目の新経済年度が近づいた。ソヴェトのプロレタリア作家団体と一般労働大衆との間には、これまでにない親和感が生じ、一層精力的な交渉が開始された。
党大会で、「ラップ」からの代表の一人ベズィメンスキーは、長い詩の形で行った報告の中で読んだ。
[#ここから2字下げ]
我々は持っていない
卓越したプランを
ウン。別なプランは
無いんだ。
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つまり、ソヴェト五ヵ年計画の生産経済計画《プロフィンプラン》が「ラップ」の作家にとっても最も基本的な階級的プランだというわけだ。
「ラップ」は、文学におけるこの生産経済計画の扱いかたを自己批判し、三〇年の秋から、労働者クラブの文学研究会指導方針を、すっかりかえた。これまで、文学研究会は、狭い、幼稚な文学趣味[#「文学趣味」に傍点]に毒されていた。工場で生産に従事している若い労働者が、七時間労働を終って研究会の椅子へ坐ると、彼の頭からは職場も生産経済計画の数字もけし飛ぶ。労働しているときとは眼つきまで別人のようになって、自分たちの建設的労働を外から眺め、大いに凝ったつもりの詩をそれについて書く。
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